兵糧米BLog

商業BL雑誌の感想中心、熱いものブチ込み系ブログ

志村先生の初BL本『起きて最初にすることは』が尋常じゃない件

志村先生の初まるごとBL作品!!

先生はBL作品をよく描かれていると勝手なイメージをもっていたのですが、意外や意外、なんと初めて!処女作!!こりゃ祭りだな!??

起きて最初にすることは (シトロンコミックス)

起きて最初にすることは (シトロンコミックス)

 

 

そもそも、志村先生に対してBLを描いていそうな印象を何故もっていたかというと『放浪息子』が大きいかな?と。

私は『放浪息子』を「読むのがシンドイ漫画」心内リストにインしていて途中巻まで読んで一旦、積ん読として寝かせてある。

「読むのがシンドイ」というのはファスト消費をしたくない、心に落ち着きをもった状態で素敵な作品に対して向き合いたい……。そういった気持ちの言い換えだ。

そういう自分との攻防があり、ふわっとしたイメージでBLや百合というジャンルの括りを越えて活躍されている方なのだろう、と思っていた。今作がまさか処女作とは。

 

 

前置きはここまで。以下、ほぼネタバレ注意。

 

 

もうね、愛おしい。ダメ人間って言葉があるけど、基本的に人間は”しちゃダメ”だと思っても理性ではどうにもならないような欲望や情に引っ張られることがある。だから人間ダメで元々、そういう空気感にすごく惹かれる。キャラ立ちしてるとかいう次元じゃなく、こういう人、いるでしょどっかに。

 

主人公である義兄弟2人はお互いダメな面をもっている。

兄・キミは弟・夏央を性的な目でみている。しかも義兄弟になった中学生当初から。しかし、その欲望をそのまま義弟にぶつけるほど酷い人間じゃない。だから「起きて最初にすることは」弟の無垢な寝顔を盗み見ること。

 

最初こそ友好的な関係を築いていたが、あるとき、弟への劣情を他で発散させようとする。具体的には、そのとき付き合っていた先輩にフェラした瞬間を弟に目撃されてしまう。

少しずつ築いてきた兄弟の絆はそこで完全に破たんする。

弟はその事件のあと、兄の居場所を徹底的に潰しニートにさせる。弟はまるで見せつけるようにヤリチンとなり女とセックスする。兄は隣の部屋から聞こえてくる情事の音でオナる。

 

ぐあああたまらんんん

 

一番好きなシーンは、兄が寝ている弟の口許から唾液をとり、それを自分の唾液と混ぜて潤滑油にして安らかな寝顔を見ながらシコる…ここの静寂さ、モノローグもないところ。起こさないように息を殺し張りつめた緊張感が、ビリビリと伝わってくる。

もうとにかく読んでほしい。今年の「このBLがすごい」にランクインしないわけがない。

 

今作は『不憫BL』という2013年にリブレから発行されたアンソロジーから掲載誌を2誌変え、1冊の単行本にまとまったものだ。

私はこの不憫BLに掲載されている作品がどれも大好きで未だに手元に置き、読み返しているのだが、この『起きて最初にすることは』を初めて読んだときは、弟の行動に理不尽さを感じていた。兄の人生を貶めるような行動……。そこまでの破壊衝動はどこからくるのか?

『不憫BL』の“不憫さ”は兄にかかっている言葉かと思っていた。しかし、1冊通して読んでみれば不憫なのはお互い様だった。なぜなら弟もまた、兄も好いていたからだ。

 

これから先、兄が弟に向けている劣情を弟がどう受けとめていくか、がみたいなあ。お互いを求め合うような関係性になっていってほしい。できればその過程を志村先生に続編というカタチでお願いしたい……!

 

生きる糧になるような、いいBLをごちそうさまでした!